人形マニアのメモ帳

球体関節人形について思いついた諸々を記すブログ

中川多理「夢の棲む街」人形展

薔薇色の脚プロトタイプシリーズ、薔薇色の脚になり始めた少女たちのシリーズの二系統の新作

 

双方とも戦慄するほどの説得力がある

かなり強めの嘘が混じった造形でありながらそれを感じさせないほどの自然さ、自然さに至るために尽くされた技量センス細やかな仕掛けの多さ

 

プロトタイプで最初に目を惹くのはお尻の肉の異常なボリュームだろう

尻が脂肪で肥大しているならダンサーとしての説得力に欠ける、かといって筋肉質であれば女性の魅力的な脚たり得ない

嘘が混じった尻肉表現であるのだろうが不思議と自然に見える

ここまで尻肉が豊かだと、座ったとき肉が重力に体重に押し潰されなければ不自然である筈なのにこの生き生きとはちきれんばかりに膨らんだ尻肉は不思議と座ってすら自然で体重に逆らえる力強さがあるように感じられる

 

そして足も素晴らしい

脚や尻を普通のサイズと見るなら纏足のように小さく萎んだ足だか、よく考えれば足こそ薔薇色の脚となる前よりずっと同じ大きさであったもので、その普通の大きさであった足が肥大した脚の先端についているのである

この視点でみると、脚や尻のボリュームや巨大さがより強調される

 

赤子のような上半身は猫背の姿勢に枝のような腕、枯れ果てたような肌と髪のカサついた風合いとくすんだ色

上下半身とも作品の描写そのままの人形

 

薔薇色の脚になり始めた少女たちは抜けるような白い肌に猫背、栄養を吸い取られ始め細くなった腕が印象的

それでいて、前回と同じく可愛らしい

 

お店の方に教えて頂いてようやく気づいたのだが、実は頬がこけている

設定の再現であるが、見る角度によって変わる人形の雰囲気をより複雑なものにする仕掛けとしても働いていてただ素直に設定をなぞるだけでない細やかさの一旦がここにも発見できる

 

また、可愛らしさ溢れる描き目や、冷たい雰囲気をまとう自作のグラスアイも不思議な魅力に溢れている

 

髪の貼り方も見逃せない

髪の分け目をスリットにして髪を埋め込んだものや分け目をギザギザにして貼ったものなど髪型や髪の材料に合わせて最適な貼り方の試行錯誤がなされているのだろう

そして、よく見ると髪の貼る位置がちょっと特殊な人形が混じっている

造形のバランスを取るため普通ならやらない位置から髪を貼る思い切りの良さがあるのだろう

 

私の好みだった人形は赤目のグラスアイの娘
薔薇色の脚となっていく途中で栄養が奪われ色素が抜けて眼の色が変化したような赤目と冷たい眼差し、不健康な抜ける白肌にそばかすの痕跡のような点々

私との間に距離を感じるような雰囲気がとても魅力的であった